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福岡高等裁判所 昭和43年(ネ)765号 判決 1970年6月15日

主文

一  原判決中一審被告有限会社東亜建設に関する部分をつぎのとおり変更する。

一審被告有限会社東亜建設は、一審原告に対し金五三七万九五〇〇円およびこれに対する昭和四二年九月一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

一審原告の一審被告有限会社東亜建設に対するその余の請求を棄却する。

二  一審原告の一審被告本田美照、同有限会社古賀組、同今村浩士、同村上倉雄に対する控訴ならびに一審被告有限会社古賀組の控訴はいずれもこれを棄却する。

三  訴訟費用中(1)本訴に関し、一審原告と一審被告有限会社東亜建設との間に生じた分は第一、二審を通じてこれを一〇分し、その一を一審原告の負担とし、その余を一審被告有限会社東亜建設の負担とし、一審原告とのその余の一審被告との間に生じた分は第一、二審を通じて一審原告の負担とし、(2)一審被告有限会社古賀組の控訴によつて生じた控訴費用は同一審被告の負担とする。

事実

一審原告(反訴被告、以下単に一審原告という)代理人は「原判決をつぎのとおり変更する。一審被告らは連帯して、一審原告に対し金五九七万九、五〇〇円およびこれに対する昭和四二年九月一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも一審被告らの連帯負担とする。」との判決ならびに一審被告(反訴原告、以下単に一審被告という)有限会社古賀組の控訴に対し「同一審被告の控訴を棄却する。控訴費用は同一審被告の負担とする。」との判決を求め、一審被告有限会社古賀組は「原判決中、同一審被告敗訴部分を取消す、一審原告は同一審被告に対し金一〇七万六、三四〇円およびこれに対する昭和四二年八月二五日から支払ずみに至るまで年六分の割合による金員を支払え、訴訟費用は第一、二審とも一審原告の負担とする」との判決ならびに一審原告の控訴に対し「一審原告の控訴を棄却する。控訴費用は一審原告の負担とする」との判決を求め、一審被告有限会社東亜建設、同本田美照らは「一審原告の控訴を棄却する。控訴費用は一審原告の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実の主張ならびに証拠関係は、一審原告が「一審被告有限会社東亜建設との本件請負契約を合意解除したのは、同一審被告の債務不履行によるものであるから、工事請負人の連帯保証人は請負人が受領したその前渡金の返還債務についても保証責任があるものである(最高裁判所昭和四〇年六月二〇日大法廷判決参照)。」と述べたほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。

なお、一審被告今村浩士、同村上倉雄は適式な呼出しを受けながら、当審における口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面をも提出しない。

理由

一  一審原告の一審被告有限会社東亜建設に対する本訴請求について

右請求についての当裁判所の認定判断は、つぎの如く附加訂正するほかは、原判決のこの点についての理由記載(原判決一〇枚目裏三行目以下同一三枚目表一一行目まで)と同一であるから、これをここに引用する。

(1)  原判決一〇枚目裏七行目の「甲第二号証」のつぎに「甲第四号証および原審における一審原告本人尋問の結果」を加え、同一二行目の「が認められ」以下同一一枚目七行目までを削除したうえ、「および、さらに同年八月一日頃までに、請負人である一審被告東亜建設の依頼にもとづき、本件工事に関する材料代および労務者の宿泊代等合計金四七万二、五〇〇円を右東亜建設のために立替え払いしているが、それらは、いずれも本件工事代金の一部に充当さるべきものとして右東亜建設の承諾のもとに支払われたものであることが認められる。そうすると、右金四七万二、五〇〇円も窮極において、本件工事代金の前払金の一部と解するのが相当であるから、結局一審原告が一審被告有限会社東亜建設に対し支払つた本件工事の前渡金は、合計金九三七万九、五〇〇円であることが認められ、甲第五号証をもつても右認定を覆すには足らず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。」を加える。

(2)  同一一枚目表九行目の「甲第二号証」を「甲第三号証」と、同一二枚目表二行目から三行目にかけての「八九〇万七、〇〇〇円」を「九三七万五〇〇円」と、同一二枚目表四行目、同一三枚目表三行目および同五行目から六行目にかけての「四九〇万七、〇〇〇円」を各「五三七万九、五〇〇円」と改める。

二  一審原告の一審被告本田美照、同有限会社古賀組、同今村浩士、同村上倉雄に対する本訴請求ならびに一審被告有限会社古賀組の一審原告に対する反訴請求について、

当裁判所も右の各請求はいずれも、理由がなく、失当としてこれを各棄却すべきものと判断するものであるが、その理由は、つぎに訂正するほかは、原判決の理由記載(原判決一三枚目表一二行目以下同一五枚目表三行目まで)と同一であるから、これをここに引用する。

原判決一四枚目表四行目の「というものと解せられる。」以下同一〇行目末までを「というのである。しかしながら、合意解除は、既存の契約関係を消滅させて契約がなかつたと同一の効果を生じさせんとする新な契約であつて、合意解除の際の特約によつてその一方が負担するに至つた原状回復義務は、既存の契約上の債務とは別の、右解除契約(合意解除)によつて新に発生した債務であるから、右合意に基き解除された契約の従前の保証人は、右解除契約の際の新な特約によらない限り、右合意解除に基く原状回復義務についての保証責任はないものというべきである(なお、一審原告が引用する最高裁判所の判例は、本件と事案を異にするものであつて、本件の如き請負契約に関する合意解除の場合には右判例の理論は適用ないものと解する。)したがつて、右合意解除の際の新な保証契約を主張することなく、単に従前の保証契約を前提とする一審原告の前記請求は、主張自体において理由がないものといわなければならない。」と訂正する。

三  以上のとおりであるので、一審原告の本件控訴は、一審被告有限会社東亜建設との関係において一部理由があるので、原判決を前記の限度においてこれを変更することとするが、その余の一審被告に対する一審原告の本件控訴ならびに一審被告有限会社古賀組の本件控訴はいずれも理由がないので、いずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九五条、第九六条、第九二条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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